血管外科・形成外科の下肢静脈瘤治療。 認知度・理解度の向上も目指す
北千住の下肢静脈瘤専門クリニックです。患者様の笑顔のために一人ひとりの症状に合った治療を提案します。
- 入谷 哲司院長
頼れるドクターが教える治療法vol.046
血管外科
目次
足から心臓に向かう静脈には、血液の逆流を防ぐための弁がついているのですが、この弁が壊れたり、動きが悪くなったりすると、心臓に帰っていくべき血液が逆流し、下肢の静脈に老廃物とともに滞留してしまいます。その結果、ふくらはぎなど下肢の血管がコブのように膨らみ、足のだるさや痛み、むくみ、こむら返りといった症状が現れたり、さらに悪化すると強いかゆみや痛みを伴う皮膚炎や皮膚潰瘍に至ったりするケースもある。これが下肢静脈瘤の基本的な特徴です。
従来は「ストリッピング治療」といいまして、皮膚を切開し、逆流を起こしている静脈そのものを切除して引き抜く治療法や、硬化剤という薬物を静脈に注入し、炎症を起こすことによって下肢静脈瘤を潰す「硬化療法」などが適用されてきましたが、最近は静脈内にカテーテルを挿入し、血管内の壁に高周波・レーザーを当てて焼灼し、閉塞する「血管内焼灼術」が主流となっています。これに対して「グルー治療」は、静脈にカテーテルを挿入するところまでは血管内焼灼術と共通なのですが、血管壁を焼灼するのではなく、下肢静脈専用の瞬間接着剤を注入することによって、逆流を起こしている静脈を閉塞します。日本では2019年12月に保険適用となった新しい治療法です。
「①麻酔が少なくて済む」「②弾性ストッキングを着用しなくてもよい」「③痛みが少ない」「④手術当日から運動を含めた日常生活を送ることができる」の4点が挙げられます。①の麻酔に関しては、血管内焼灼術ではカテーテル挿入部分に加えて、血管の数か所に局所麻酔を行う必要がありますが、グルー治療ではカテーテル挿入部分だけで大丈夫です。また、②に関しては、血管内焼灼術の場合には、熱によって血液が凝固して血栓ができるリスクがあり弾性ストッキングの着用が不可欠ですが、グルー治療の場合にはその必要がありません。ご高齢の患者様など、弾性ストッキングを履くのが辛いという方には大きなメリットといえるでしょう。
③の痛みについて申し上げますと、血管内焼灼術を受けた後は、痛み止めを飲むほどではありませんが、ビリビリ・ヒリヒリという軽い痛みを感じられる患者様が少なくありません。一方、グルー治療の場合には、痛みを感じるのはカテーテル挿入部分に局所麻酔を行うときだけで、術後の痛みは基本的にありません。④に関しては、血管内焼灼術の実施から一週間は血栓の発生を防ぐため、飛行機への搭乗や激しい運動は控えてもらっています。この点、グルー治療の場合には運動制限はなく、手術当日から普段通りの生活を送っていただけます。
血液の逆流が起きている血管にカテーテルを挿入し、医療用の瞬間接着剤を注入。超音波エコーを見ながら皮膚の上から圧迫し、血管を閉塞していきます。こうしたプロセスを血管内の数か所で行なったら、カテーテルを抜き、絆創膏を貼って終了です。手術時間は片足につき15分〜30分ですね。血管内焼灼術を受けられた患者様には弾性包帯を巻く、弾性ストッキングを履くなどしてご帰宅いただいていたことと比べると、かなり気軽に受けることができますね。なお、術後の検査に関しては、血管内焼灼術の場合には、血栓が発生していないかどうかを確かめるために手術翌日に来院いただいておりますが、グルー治療では一週間後に来院いただき、アレルギー反応等の確認をさせていただきます。手術費用に関しては、新しい治療法ということもあって、血管内焼灼術の1.5倍程度です。
デメリットとしては、「①アレルギー反応のリスク」「②血管の形状や深さによっては治療が難しいケースがある」という2点が挙げられます。①に関しては、患者様の10〜20%に何らかのアレルギー反応が起きるという指摘があり、瞬間接着剤に対してアレルギーがある方や、花粉症や食物を含めた一般的なアレルギーが3つ以上ある患者様へのグルー治療の適用は避けた方がいいとされています。強いアレルギー反応が出た場合には、血管を切除して取り出す必要が出てきますので、問診の段階で手術のリスクについてしっかりと説明しています。②に関しては、浅いところにある血管にグルー治療を適用するとアレルギー反応が出やすい、蛇行の多い血管には接着剤が入りにくいためグルー治療が向いていない、という指摘があります。いずれにしても新しい治療法ですので、長期経過をしっかりと観察していくことが大切だと思っています。
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