カバサワデンタルオフィス　椛沢 岳芳 院長 | ドクターズインタビュー

治療の可否とタイミングの慎重な判断が、長期的な口腔内の健康に繋がる

― インプラントとは、どのような治療ですか？

歯を失った箇所の顎の骨に人工の歯根を埋め込み、そこへセラミックなどで作った人工の歯を取り付ける治療です。私はこのインプラント治療を、喪失の連鎖を食い止める手段のひとつと捉えています。歯は1本抜けるとほかの歯に負担がかかり、道連れのような形で抜けていくことが往々にしてあります。失った歯を補い、ほかの歯を犠牲にしないためのツールと考えればわかりやすいでしょう。とはいえ、インプラントは万能ではありません。将来ほかの歯が失われたとき、拡張性のない治療計画でのインプラントはその後の治療を困難にしてしまうこともあるのです。ですから、失った歯の両隣をはじめとする残りの歯の健康が保たれているのであれば、自分の歯を残す治療に注力すべきであり、必ずしもインプラントを急ぐ必要はありません。長期的に考えれば、むしろインプラントはできるだけ遅らせたほうがいい治療法ともいえます。

― まず口腔内の状態を見極めることが大切なのですね。

そうです。インプラントに耐えられる口腔内なのか、ほかに不安要素はないのかなどを慎重に診断し、将来的に問題がないと判断した場合にしかインプラントは行いません。当院ではインプラント治療に最長10年の補償をお付けしているのですが、これも噛み合わせなど適切なメインテナンスを行っているからこそ可能なのです。
一方で、治療を断られてしまうような難症例であっても、インプラントが最適な治療であると判断すれば対応できることも当院の強みです。インプラントの人工歯根を顎の骨に埋めるためには、骨の量、厚み、高さが必要です。当院ではGRB法（骨誘導再生法）という骨の再生を促す治療法を導入しており、顎の骨が不十分でもインプラント治療を行える体制を整えています。インプラント治療を断念していた方も、諦めずにご相談ください。

― どのような方がインプラント治療を受けていますか？

長年にわたって歯を失った状態で生活されてきた方が中心ですね。入れ歯で補っていたものの、見た目や食べにくさが気になり、インプラント治療に移行されるというケースなどがあります。年齢層でいえば40代後半から60代の方が多いですが、決して高齢の患者様に行えないわけではありません。口腔内がインプラントに耐えられる状態であれば、70代、80代でも治療を行ったケースはたくさんあります。当院では麻酔科医が在籍しているほか、歯科技工士とも提携しており、より負担の少ない手術、見た目にもこだわった治療を提供することが可能です。

高い技術が求められるインプラント治療。人材育成でも日本の歯科医療に貢献

― 治療の流れと、その後のケアについて教えてください。

当院は完全予約制ですので、診察後に手術の予約をしていただきます。手術当日の注意点はとくにありませんし、朝食もとっていただいて結構です。術後は傷を刺激しないよう注意していただき、手術部位の歯磨きも抜糸まではブクブクうがいで済ませていただくほうが安全です。術後7〜10日で抜糸を行います。その後はインプラントが長持ちするよう歯磨き指導やPMTCと呼ばれる歯のクリーニングを提供するほか、定期検診で噛み合わせのチェックを行い、必要に応じてインプラントを調整させていただきます。

― 先生は、若手の育成にも注力されているそうですね。

私は「5-D Japan」という、歯科医師のスタディグループに所属しています。これは専門分野の異なる5人の歯科医師が2008年に立ち上げたもので、従来の縦割り的な勉強会ではなく、ともに研鑽を積み、自由に学び合える環境をつくりたいという熱意によって結成されました。根管治療、歯周治療、インプラント治療、審美治療、補綴治療、マイクロ治療、予防治療などを包括的にカバーした質の高い歯科医療の提供をめざし、500名以上の歯科医師が研鑽を積んでいます。
5-D Japanにはインストラクターと呼ばれる歯科医師が15名ほど所属していますが、私もその一人です。年に5回ほど講壇に立ち、詰め物や被せ物など歯内修復コースの指導を行っています。すでにこちらで学んだ数多くの歯科医師が国内外で活躍しており、彼らがまたインストラクターとして戻ってくることで、さらにクオリティの高いカリキュラムの提供、ひいては日本の歯科医療の前進に繋がっていると自負しています。