リストカットの傷痕治療。「戻し植皮手術」の可能性
「戻し植皮手術」によってリストカットの傷跡をより自然に、目立たなくします
- 村松 英之院長
頼れるドクターが教える治療法vol.071
形成外科
目次
半袖のユニフォームを着る職場に就職するなど、ライフスタイルの転換点を迎えて腕を出す機会が増える方ですね。
実は自傷行為の発生率に男女差はそれほどないのですが、傷跡を気にして来院されるのは女性、特に20代前半から30代半ばの年代の方が圧倒的に多いです。傷跡がある方は、社会の偏見や周囲からの視線を意識せざるを得ないため、生きづらさを感じながら生活しています。真面目な性格の方も多く、「傷跡を目にした相手を嫌な思いにさせないか」「傷跡があることで心が弱い人と思われたくない」などの不安から、仕事や恋愛を含めた人間関係にも消極的になりがちな傾向があるようです。
2種類あります。1つ目は傷跡そのものを目立たなくする、もしくは隠しやすくする方法です。2つ目は、傷跡を敢えて別の傷跡にすることで、それがリストカットの傷跡であるとは判らないようにする方法です。
最終的な目的は日常生活をしやすくすることですが、どちらを選択するかは患者さまが治療後どうなりたいかによって変わります。たとえば、仕事をする時に隠せれば問題ないとお考えの方には前者をご提案します。交際相手や子どもに傷跡があることを知られたくない方の場合、前者の方法を選択しても隠すだけでは意味がないため後者をご提案します。
当院では、「フラクショナルレーザー治療」「切除術」「削皮術(さくひじゅつ)」「戻し植皮」の4種類をご提案しています。特に深くて太い傷跡に対しては、フラクショナルレーザー治療以外の手術による治療をおすすめしています。
切除術は、リストカットの傷跡自体を切除する手術で、位置や範囲に応じて直線やジグザクに縫合することで、手術の傷跡もなるべく目立たないようにします。削皮術は、問題のある部分の皮膚を削り取って再生されるのを待つ手術で、切除術では対応が難しい広範囲に及ぶ傷跡の治療に向いています。
いずれもメリットがある手術ですが、切除術は縫い跡ができる、削皮術は肥厚性瘢痕と呼ばれる赤みの強いふくらみができる可能性があり、治療による新しい傷が原因でお悩みが解消されないリスクもあります。そのようなデメリットが少ない手術が「戻し植皮」です。
戻し植皮は、リストカットの傷跡がある部分の皮膚を薄く剥がして真皮層を平らに整えた後に、元の方向から90度回転させた状態で植皮する手術です。皮膚がくっついた後は広範囲の火傷後のような見た目になり、リストカットをした傷跡はうっすら縦筋が残る程度なので、治療後の腕を見られてもリストカットの傷跡とは思われにくい状態となります。
手術時間は、傷跡が狭くて浅い場合であれば1時間半程度ですが、大きさや深さ次第では最長で3時間近くかかる場合もあります。術後は2〜3日以内に傷口をチェックしてギプスを再装着、そこから1週間後に抜糸、その後も傷口の治り具合を観察するため定期的に通院していただきます。手術した部分が落ち着くまで1年程かかりますので、その間は保湿と遮光を徹底していただくように、患者さまにはお願いしています。
カウンセリングで、患者さまのご要望や「なりたい姿」の意識合わせをしてから具体的な治療方法をご提案するのですが、傷跡を敢えて別の傷跡に変える手術を希望される患者さまの7~8割の方が戻し植皮を選択されていますね。他院で治療を受けたものの、想像していたものと異なる仕上がりになったことから当院に相談に来られる患者さまもいらっしゃいます。この治療は2018年末から開始しており、現時点(2022年4月)で100件以上の治療実績があります。
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