リストカットによる傷跡を隠す生活にピリオドを打つ「戻し植皮」
リストカットの傷跡にコンプレックスを持つ方のお悩みに、「戻し植皮」などの傷跡治療でアプローチします。
- 村松 英之 院長
頼れるドクターが教える治療法vol.023
形成外科
目次
当院はやけど、傷跡、皮膚腫瘍を専門的に治療する形成外科のクリニックです。疾患別の構成比率に関して申し上げますと、やけどが3割、傷跡が3割、皮膚腫瘍が2割、その他の皮膚疾患・美容外科系の疾患が2割といった具合です。やけどや皮膚腫瘍の治療にいらっしゃる患者さまは近隣にお住いの方が多いのに対して、傷跡治療の患者さまは全国からいらっしゃいます。
いかなる治療を行なっても、傷跡そのものを完全に消すことはできません。当院が目指すのは、治療や手術によって自然なやけどの傷跡へと変えること。そして患者様の気持ちを楽にすることです。
リストカットの傷跡に悩みを抱えて当院を来院される患者さまは、月平均で40〜50人といったところでしょうか。以前勤務していた大学病院や一般病院ではほとんど診ることがなかったので、開業当初は大きな衝撃を受けました。
大きく分けて、①レーザー治療、②切除手術、③削皮手術、④戻し植皮手術の4つの治療方法があります。治療方法は傷跡の広さや深さによって異なりますが、入念なカウンセリングを通じて、患者さまの生活環境や家庭環境、経済的状況をしっかりと汲み取ったうえで、最適な治療法や手術をご提案するように心掛けています。
具体的に申し上げますと、①は、フラクショナルレーザーによって傷跡に細かい穴を開け、凹凸を平らにすることで、傷跡を薄く、目立たなくする治療法です。ただ、リストカットの傷跡のような、太くて深い傷跡に関してはなかなか効果が出ないので、当院では②〜④の手術を行うケースの方が多いですね。
②の「切除手術」は傷跡を切除し、直線やジグザグの線に変えることで目立たなくする手術。③の「削皮手術」は、傷痕を広く、薄く削り、やけどの跡のような見え方に変える手術です。双方ともに、一度の治療で見え方を大きく変えられるなどのメリットがありますが、傷跡がひきつれたり、盛り上がったりする可能性があることなど、デメリットも伴います。そこで、当院では④の「戻し植皮手術」をおすすめしています。
「戻し植皮手術」とは近年考案された術式で、傷跡がある部分の皮膚を正方形に、非常に薄く採取し、真皮の凹凸を平らにした上で、90度回転させて元の部分に植皮します。局所麻酔を使用する手術で、所要時間は1時間半から2時間程度。また、術後2週間はギプスによって固定し、最初の1週間は患部を濡らさないようにする必要があるのですが、この手術には他の治療法や手術では得られない大きなメリットがあります。それは、リストカット特有の横方向の傷跡を薄くした上で、縦方向の傷跡に変えるため、リストカットによる傷跡として認識されにくくなるということです。また、採取した皮膚をそのまま戻すため周辺部位にうまく馴染む点、ひきつれが起きにくい点もメリットとして挙げられるでしょう。
とても薄い皮膚を採取して植皮するため、術後に赤くなったり、湿疹や色素沈着ができやすく、完全に落ち着くまでには1年ぐらいかかる点、それから、リストカットによる傷跡としては認識されにくくなる一方で、傷跡そのものの範囲が広がったり、目立つようになる可能性もあるということでしょうか。もっとも、「戻し植皮手術」が患者さまの心理に与えるポジティブな効果は、これらのデメリットを補って余りあるものだと思っています。
「戻し植皮手術」は生まれて間もない術式ですが、今後、リストカットによる傷跡の治療のメインストリームになっていくと確信しています。実際、アジアの国際学会で「戻し植皮手術」について発表したところ、非常にいい反応を得ることができました。その意味で、「戻し植皮手術」がリストカットの傷跡治療の“世界基準”になっていく可能性も十分考えられますね。
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