頼れるドクターが教える治療法vol.049
整形外科
若い方に多い「腰椎椎間板ヘルニア」や中高年に多い「脊柱管狭窄症」、高齢者に多い「脊椎圧迫骨折」を中心に、首・腰・手足の痛みやしびれ、歩行困難といった、背骨に原因があって起こる疾患・症状に特化した外来です。福岡輝栄会病院ではこれまで脳神経外科と脊椎・脊髄外科にて脊椎疾患治療を行なってきましたが、より患者さんが受診しやすい専門外来をつくろうと2021年4月にせぼね外来を開設しました。
薬物治療やブロック注射(麻酔薬)による保存的治療はもちろんのこと、それでは効果が得られない場合や神経麻痺症状が強い場合は手術も行います。福岡市東区ではまだ導入事例が少ない、腰椎椎間板ヘルニアの最新手術「ヘルニコア注入療法」や、脊椎圧迫骨折への「経皮的バルーン椎体形成術(BKP手術)」に対応しているのが特徴ですね。これらの手術はどちらも保険診療となっています。
腰椎椎間板ヘルニアとは、腰の椎間板から飛び出した髄核(=ヘルニア)が神経を圧迫することで足の痛みやしびれ、腰の痛みが起こる病気です。従来の治療は外科手術が基本で、1〜2週間の入院が必要でした。2018年に保険適用となったヘルニコア注入療法は、局所麻酔による1回の注射で高い治療効果が期待できる画期的な手術療法です。ヘルニコアを注射することで有効成分のコンドリアーゼが髄核内の保水成分を分解し水分によるふくらみを和らげます。結果として神経への圧迫が改善し、痛みや痺れなどの症状が軽減すると考えられています。およそ1か月で本来の状態へと改善することが期待でき、ヘルニアを切ることなく神経への圧迫が軽減され、手術も30分程度で終了するため、当院のせぼね外来では日帰り手術を基本としています。
脊椎圧迫骨折とは、背骨が押し潰されるように変形してしまう骨折です。骨粗しょう症が原因であることが多く、またちょっと動くだけで背骨が痛むので、高齢者が寝たきり状態となるきっかけになりやすい骨折です。
経皮的バルーン椎体形成術(BKP手術)は、骨折した部分に小さな穴を開け、骨内部にバルーンを入れて膨らませることで、潰れていた背骨の形を整復する手術です。さらに、骨セメントを注入して背骨を安定させるので、コルセットでの療法に比べ痛みが発生しにくいのが特徴です。手術も20分程度、入院も数日で済むため、ご高齢の方の要介護化を防ぐという意味でもおすすめしたい手術療法です。
私は久留米大学医学部卒業後、同大学病院の整形外科に入局。10年間の勤務を通じ、約2000例を超える脊椎疾患の手術療法に従事しました。またアメリカのエモリー大学にも留学。英語が堪能な妻に支えられ、椎間板の遺伝子治療に取り組む充実した2年間を過ごしました。
そのキャリアから現在では、日本脊椎脊髄病学会が認定する指導医として活動。2018年から2021年にかけてはBest Doctorsの一人にも選出いただきました。福岡輝栄病院は市中病院ですので、手術によっては大学病院と連携する必要がありますが、私に可能な範囲で最新かつ最善の治療に取り組みたいと考えています。
福岡輝栄会病院のせぼね外来で取り組むヘルニコア注入療法やBKP手術は、腰椎椎間板ヘルニア治療に十分な経験を持つ医師や、専門のトレーニングを受けた日本脊椎脊髄病学会指導医などに手術が許されている手術療法です。私は学会認定の指導医としてこの両手術に取り組むだけでなく、積極的に講習や講演を行い普及にも努めています。私はこれまでヘルニコア注入療法を100例近く執刀しましたが、約95%の患者さんが満足する結果を得ています。こうした実例も紹介しつつ、導入される医師や病院が増えることを願っています。
脊椎疾患による辛い痛みやしびれは、歩行や日常生活に困難を引き起こします。ですが、地域性なのか福岡には痛みやしびれを我慢してしまう方が多いように感じています。しかし医師としては「我慢しないで!」と声を大にしてお伝えしたいですね。特にご高齢の方は、悪化して寝たきり状態になると運動器や認知機能が急激に低下します。私の父も入院により一時的に認知機能が低下したことがありました。せぼね外来が入院や寝たきりを避けるための治療法を多く導入しているのは、そのようなケースを減らしたいと願っているからなのです。
医療法人輝栄会 福岡輝栄会病院
歯周基本治療から歯周組織再生療法まで。歯科医師と認定歯科衛生士による歯周病の治療とケアを提供します。
おなかとおしりの専門クリニック。メスを使わない内痔核の日帰り手術「ALTA療法」を実施しています。
難治性のうつ病にも効果が期待できる「r-TMS療法」。併用できる治療の選択肢も豊富に用意しています。