頼れるドクターが教える治療法vol.038
整形外科
変形性膝関節症の患者さまのひざの関節のなかに、間葉系幹細胞を注射して、ひざの軟骨を再生させる治療法です。変形性膝関節症は、ひざの骨の表面を覆う軟骨がすり減り、破壊されることによって、痛みなどの症状が出てくる病気で、ご高齢の方や女性、肥満(気味)の方、ひざのけがをしたことのある方がかかりやすいといわれています。骨には知覚があるので、骨と骨が直接ぶつかるようになると痛みを感じるんですね。イスから立ち上がるときや、階段を上り下りする際に、ひざに痛みを感じる患者さまのうち、レントゲン検査で膝関節の強い変形が認められた方に、この治療法を適用しています。
間葉系幹細胞は、骨髄や皮膚、筋肉、脂肪、軟骨など、“間葉系”と呼ばれる組織の細胞への分化能を持つ幹細胞です。この幹細胞を膝関節のなかに注射すると膝軟骨に変化して、摩擦によって削れてしまった部分を埋めてくれるのです。それと同時に、幹細胞から放出される栄養因子などが、関節のなかに残っている軟骨細胞の増殖を促して、関節軟骨を再生させていきます。これら2つのメカニズムによって軟骨の再生が進むと、骨同士が直接ぶつかることがなくなり、変形性膝関節症によるひざの痛みも弱まっていくんです。
これまでの治療法は軽症および重症の患者さまに対するもので、中等症の患者さまに対する適切な治療法はありませんでした。軽症の場合には、内服薬や湿布を処方したり、ヒアルロン酸やステロイドを注射したりして痛みを抑え、進行を遅らせるのですが、膝軟骨が元に戻るわけではありません。また、変形性膝関節症が重症化し、歩行が困難になった場合には、大腿骨や脛骨を部分的に削り取り、金属製の人工関節に置き換える手術を行いますが、最低でも2週間の入院と辛いリハビリが必要なうえに、人工関節の可動域は狭くて正座ができないといったデメリットがありました。この点、膝軟骨再生治療では、膝軟骨を再生させることで病状の進行を食い止め、重症化を避けることができます。従来の治療法に取って代わるわけではありませんが、これまでカバーできていなかった患者さまを治療できるのは大きな魅力です。手術はしないに越したことはありませんからね。
初回はカウンセリングを行い、痛みの状態や治療歴などを確認するとともに、幹細胞治療についてご説明します。その後、患者さまに主治医の同意を取っていただいたうえで、膝軟骨再生治療をスタートさせます。まずは皮下脂肪を採取して幹細胞を取り出し、院内の細胞調整施設(CPC)で約4週間かけて培養。培養が終わったら、膝関節のなかに注射で投与する―。これが膝軟骨再生治療の基本的な流れです。当クリニックでは幹細胞の採取から保存、培養、検査に至る一連の過程をすべて自院で行っていますので、汚染のリスクがきわめて小さく、また、細胞の鮮度を保ったまま培養を行うことができます。ちなみに膝軟骨は約6カ月かけてゆっくりと再生していくのですが、なかには1カ月程度で効果を実感される患者さまもいらっしゃいます。また、自宅でのリハビリについてもしっかりフォローしています。
2019年は約170人の患者さまに膝軟骨再生治療を実施し、その7~8割の患者さまから「痛みがおさまった」というご連絡をいただきました。なかでも印象に残っているのは、杖を使わないと歩けず、このままでは車イスが必要になるといわれていたおばあちゃんが、自力で歩けるようになったケースです。「デパートに歩いて買い物に行けるようになり、10歳くらい若返った気がする」というお手紙をいただいたときは、本当に嬉しかったですね。
ある調査によると、日本全国で800万人を超える方が、変形性膝関節症による痛みに悩まされているそうです。ひざが痛くなると歩くのが億劫になり、体を動かそうとしなくなります。そうなると足の筋肉が衰え、ひざの痛みはますます悪化、車イスや寝たきりでの生活を余儀なくされる可能性が高まります。ある意味で、“ひざは万病のもと”なのですね。このような悪循環を膝軟骨再生治療により断ち切ることで、皆さまのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上、さらには健康長寿社会の実現に寄与していきたいと思っています。
表参道ヘレネクリニック
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おなかとおしりの専門クリニック。メスを使わない内痔核の日帰り手術「ALTA療法」を実施しています。
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