山口歯科医院 山口 文誉 院長 | ドクターズインタビュー

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頼れるドクターが教える治療法vol.061

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進化する歯周病治療。リスクファクターの把握と再生療法
進化する歯周病治療。リスクファクターの把握と再生療法
山口歯科医院
  • 山口 文誉 院長
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横浜・関内のデンタルクリニック「山口歯科医院」。虫歯などの一般的な保険診療から、インプラント治療やセラミック治療まで幅広い分野の診療を手掛ける同クリニックは、なかでも「歯周病治療」に力を入れている。院長の山口文誉先生は、日本歯周病学会専門医・指導医。海外研修や講演、執筆活動にも積極的に取り組み、2021年11月には『イラスト・写真・動画で学ぶ! 低侵襲 歯周組織再生療法』(クインテッセンス出版刊)を刊行した。日本歯周病学会の専門医や認定医の資格を持つドクター、そして認定歯科衛生士を結集し、チーム医療を実践する山口先生に、歯周病治療の現在地について伺った。(取材日 2021年10月11日)

歯周病研究の現在。病因論の成果、ステージ・グレードによる新たな分類法

― 近年の歯周病研究の成果について聞かせてください。

歯周病には、プラーク(細菌の塊)によって歯肉に炎症が生じる「歯肉炎」と、歯肉の中にある歯槽骨と呼ばれる骨が溶ける「歯周炎」という2つの段階がありますが、すべての歯肉炎が歯周炎に進行するわけではありません。スリランカの茶畑で働く、歯磨きの習慣のない労働者を15年間にわたって追跡調査した研究によると、「多くのプラークが観察されたが歯周病が全く進行しない人」が全体の約10%もいたのです。つまり、歯周炎の発症にプラークが大きな影響を及ぼすのは間違いありませんが、必ずしも細菌だけが原因ではないということです。では、何が“スイッチ”を入れるのか。病因論の研究が進められた結果、歯周病は多因子性の疾患であり、多様な「リスクファクター」が介在することが分かってきました。

― では、何がリスクファクターになるのですか。

喫煙と糖尿病を2大因子として、他にはストレスや歯ぎしり、不規則な食習慣、年齢、遺伝的な要素などがリスクファクターとして考えられています。口腔内には良い常在菌と悪い常在菌が棲みついており、プラークがある程度増殖しても平衡状態が保たれているのですが、リスクファクターの影響を受けてバランスが崩れると“スイッチ”が入る、という説が有力視されているのですね。何れにしても、歯周病のリスクが高い人をできるだけ早期に発見し、リスクファクターを可能な限り取り除く、そして患者様お一人お一人に合ったオーダーメイドの治療により歯周炎への進行を予防して、できるだけ多くの歯を残せるようにすることが求められています。

― 近年の歯周病治療について、他にはどのような発展がありますか。

歯周炎の分類方法が約20年ぶりに改定され、ステージ・グレードという枠組みで分類されるようになりました。Ⅰ(初期)、Ⅱ(中等度)、Ⅲ(重度)、Ⅳ(アドバンスト)という4つのステージを区別した上で、進行の速さをA(緩慢)、B(中等度)、C(急速)のグレードで示す仕組みです。これにより、従来は「重度の歯周病」と呼んでいた症状を「ステージⅢ・グレードB」のように明晰かつ客観的に表示できます。歯周ポケットに関しても、単純に歯と歯肉の間の溝の深さを測定するだけでなく、歯肉の退縮を考慮に入れることがルール化され、より緻密な診断が可能となりました。

診査・診断をもとにオーダーメイドの治療を実践。カギはメインテナンスにあり

― 歯周病治療の具体的なプロセスについて聞かせてください。

最も重要なのは診査・診断のプロセスです。歯周ポケット検査のほか、レントゲンや口腔内写真、場合によってはCT検査を行なって精密に診査します。その上で、患者様へのヒアリングを通してリスクファクターを把握します。遺伝的な要素もリスクファクターの一つですので、ご家族の歯周病の状態についても必ずお伺いします。その後、ステージやグレードに合わせ、オーダーメイドの治療を行っていきます。
歯周病治療の主役は歯科衛生士です。まずはプラークを徹底的に取り除くとともに、歯磨きの改善を促して、治療の反応を見ていきます。中等度〜重度のケースを含めて、多くの患者様は歯科衛生士による非外科的な治療によって良好な反応を示しますが、重度の歯周炎の方やリスクファクターを数多く保持している方は、治療の反応がなかなか得られないケースが少なくありません。ここからはドクターの出番で、私の専門である「歯周組織再生療法」などの外科的な治療を行っていきます。

― 歯周組織再生療法とはどのような治療法でしょうか。

歯周病によって欠損した歯槽骨を再生する手術です。順を追って説明すると、歯肉を切開して内部の汚れを取り、再生材料を塗布した上で、歯槽骨が欠損した箇所に血餅(血液のかたまり)がきちんとできるようにして、歯肉で再びフタをします。この血餅から新しい歯槽骨がつくられるのです。口腔内という多くの細菌が常在する環境下での再生治療は至難の業でしたが、21世紀に入ってマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)が普及したことで状況が一変し、トレーニングを積んで一定の操作技術を習得すれば実施できるようになりました。

― インプラントの歯周病もあると伺いました。

「インプラント周囲炎」と呼ばれる疾患ですね。インプラントそのものは金属ですから虫歯にはなりませんが、歯槽骨が溶けてインプラントのグラつきや脱落をまねく可能性があります。リスクが高いのは、やはり歯周病の既往歴がある患者様です。ですから、インプラント治療を行う前に歯周病を徹底的に治療しておく、そして治療後も徹底したメインテナンスを行っていく、この2点が非常に重要です。我々歯周病専門医は、「インプラント周囲炎」のリスクを限りなく抑え、長期的に安全なインプラント治療を提供する専門医でもあります。

ドクターからのメッセージ
  • 山口 文誉 院長

歯周病治療は“治療が終わってからがむしろスタート”で、非常に長いお付き合いになります。大切なのは、定期的な検査やメインテナンスを通して、リスクファクターを粘り強く取り除いていくことです。私どものモットーは「できるかぎり歯を残すこと」。“伴走者”として患者様に寄り添い、責任を持って治療に携わっていきます。ぜひお気軽にご相談ください。

進化する歯周病治療。リスクファクターの把握と再生療法
進化する歯周病治療。リスクファクターの把握と再生療法

山口歯科医院

場所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24−2 ニュー本町ビル 1F MAP
電話
045-349-2180
診察領域
歯科、矯正歯科、歯科口腔外科
専門医
歯周病専門医

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