頼れるドクターが教える治療法vol.054
精神科
TMS治療は磁気を使って脳神経のネットワークのバランス異常を改善する治療法です。薬物療法が主体であった従来の精神科や心療内科の治療法に対し、脳の神経に直接アプローチする最先端の治療法として注目を集めています。
うつ病や大人の発達障害の主な原因は、過度のストレスによる脳神経の機能不全です。神経ネットワークが過剰に働き続けることで脳に疲労が蓄積し、睡眠障害・不安障害・失感情症・注意欠陥などの特性を生み出す“脳の体質”になってしまうのですね。TMS治療は、頭の外側から脳に磁気をあてることで脳神経の異常を整え、このような“脳の体質”を根本から改善。副作用も少なく一度効果が出れば再発を抑えられることから、減薬も目指すことが可能です。
TMS治療は、欧米ではうつ病の一般的な治療法として広く普及しています。日本でも2019年から重度のうつ病に対するTMS治療が保険適用となりました。これに対し当院では、軽度からの発達障害や発達障害が原因で起こる二次障害にTMS治療の自費診療を行なっています。具体的にはADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー)の大きく2つが挙げられ、二次障害としての学習障害や感覚過敏、不安障害、パニック障害、うつ特性などにも有効です。
ある程度の年齢になってから発達障害を発症した方や、正式な診断には至らないけれどグレーゾーンにいる方にTMS治療をおすすめしています。例としては「コミュニケーションが難しい」「こだわりが強い」「忘れ物やミスが多い」「じっとしていられない」といった悩みを感じている方ですね。
私は過去に一般的な治療を行う精神科に勤めておりましたが、訪れる患者さんのおよそ1/3が「自分は発達障害ではないか」とお悩みの方でした。特性はあるけれど、周りに迷惑をかけないよう自力である程度カバーできる。でも、だからこそ苦しいし、生きづらさを感じている。そのような方々を助けたいという想いから、私はTMS治療に注目するようになりました。
まず、問診で患者さんのお悩みを確認します。続いて、脳波を測定することで脳の状態を可視化できるQEEG検査で、特性の有無や二次障害の診断を行います。
QEEG検査でTMS治療の有効性が確認できれば、治療方法や通院回数、費用についてご説明します。希望されれば当日の施術も可能です。治療の際には、当院が特許を取得するレーザーターゲットシステムで刺激部位をミリ単位で特定。患者さんの脳の状態に合わせて波長や周波数を調整後、専用のコイルを頭にかざして電流を流します。
ペン先で頭をコツコツと打たれているような感覚がありますが、痛みや副作用を伴わないため幼児でも受けることができます。治療時間は1回あたり約20分。回数は32回を1クールとしており最低治療回数は8回です。効果が現れる回数は人や症状により異なるため一概には言えませんが、特性や二次障害が強い場合は1.5クール以上をすすめています。
またTMS治療はグレーゾーンの方にも効果を発揮します。当院でグレーゾーンと診断された30代男性は、早い段階で脳疲労や睡眠バランスが改善。「不快だった街の喧騒が気にならなくなくなった。空を綺麗だと思う気持ちが生まれた。内向きだった心が開かれたように感じる」とおっしゃっていましたね。
薬物は服用し続けると耐性がつきます。だからといって服用量を増やすと副作用も出やすくなってしまいます。一方、TMS治療は“脳の体質”という根本原因から改善するため、薬で二次障害を抑える必要が薄れます。そのため、TMS治療を通じて減薬につながる方は多いですね。
例えば当院を受診されたある50代女性は、発達障害に加え摂食障害が強く出ていました。そのため鎮静力が強いものを中心に6種類ほどの薬を服用されていたのですが、日中に眠気を感じて活動性が低下するという副作用に悩まされていました。しかしTMS治療を1クール受けることで、副作用の強かったものを中心に減薬に成功。摂食障害も軽くなり、何よりご本人が前向きな気持ちに変化されました。
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できるだけ「痛くない・腫れない・切らない・オペ回数の少ない・期間の短い」インプラント治療を行います。
老化した椎間板に直接アプローチし、椎間板ヘルニアを始めとする脊椎疾患の改善を目指します。
進行すると透析治療が必要になる慢性腎臓病。患者さんが前向きに腎臓疾患治療に取り組めるよう支援します。