循環型地域医療連携・包括的治療・チーム医療で糖尿病に挑む
地域のクリニックと緊密に連携。チーム医療を実践し、合併症の重症化予防、健康寿命の延伸に貢献します。
- 医療法人輝栄会 福岡輝栄会病院 福岡県福岡市東区
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- 田尻 祐司 糖尿病センター長
頼れるドクターが教える治療法vol.040
心療内科
幻覚や妄想、徘徊や焦燥、社会的に不適切な言動、暴言、抑うつなどの「認知症に伴う行動心理症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia)」のことです。認知症というのは、何らかの原因で脳の機能が低下して生活に支障をきたす状態を指し、もの忘れや判断力、理解力の低下が“中核症状”とされています。これに対してBPSDは“周辺症状”。つまり、中核症状に伴ってあらわれる症状ですが、ほとんどの患者さんが何らかのBPSDを経験するといわれています。BPSDはご本人の心理状態や体調、それからご家族や支援者との関わりなど、さまざまな要因が複雑に絡み合うことによって生じると考えられています。BPSDの原因を特定するのは難しい場合もありますが、経験上、ある種のパターンや傾向が存在するのは間違いありません。そして、なかでもBPSDの発症に大きな影響を及ぼすのが、周囲の人々の関わり方なんです。
その通りですが、ご本人とのこれまでの関係性やコミュニケーション様式をがらりと変えることは簡単ではありません。例えば「いままで通りにできなくても、頭ごなしに叱ったらダメ」と頭では分かっていても、ご家族にもそれぞれの生活がありますから、余裕がなくなればついつい怒鳴ってしまう。こうした心情は当然理解できます。また、一口に“ご家族”といっても、主に介護を担っているのが配偶者なのか、息子さんや娘さんなのか、あるいはお嫁さんなのかによって、ご本人への思いはさまざまです。ご本人の状態を老年精神医学の専門的見地から評価するとともに、それぞれのご家庭の事情を考慮しながら、いわば“オーダーメイド”で治療や対応を提案する。精神科医ならではのアプローチだと思っています。
ただBPSDを無くそうとするのではなく、“受け皿”を整えることだと思います。ご家族や支援者だけでなく、ご本人もBPSDに振り回されない状態にすることが治療の目標です。これを実現するために、次の2つのアプローチを並行して進めます。1つは薬物療法によって症状を緩和すること。もう1つはご本人に対するご家族・支援者の関わり方や見守る環境を変えていくことです。これら2つのアプローチをどのように使い分けるのか、組み合わせるのかが腕の見せ所なのですが、その見極めや治療のための重要なツールになるのが「応用行動分析」です。
繰り返し起こっている行動の直前及び直後の状況変化をていねいに読み取ることで、その行動が果たしている機能や意味を理解し、治療に結びつけていく手法です。一例として、「同じ質問を繰り返す」という行動を取り上げてみましょう。介護現場では「毎回、はじめてのように話に応じる」ことが推奨されてきたものの、周囲は疲弊して必ずしも良いケアに結びつかないことがありました。「応用行動分析」では次のように考えます。例えば、「同じ質問を繰り返す」ことが、食事の支度中などご家族との関わりが少なくなっている場面で起きやすいことがわかれば、「質問」によって他者との関わりが得られるというメリットが形成されている可能性を疑います。仮に「さっき言ったでしょ!」といったご家族からの叱責であったとしても、ご本人にとって関わりがまったくないよりはマシな状況なのかもしれません。いま問題となっている行動の性質・機能に応じて、その行動の直前もしくは直後の対応・環境を工夫することで、結果として問題行動を減らすアプローチが応用行動分析の手法です。
「すごく良くなった」とおっしゃる方が多いですね。認知症が完治するわけではないので、最初はこちらが不思議に思っていたのですが。ご本人の状態に応じて薬物療法と非薬物療法を組み合わせながら、しっかりと道筋を立てて治療を進めていく過程で、“見えない敵”と戦っているという不安が解消され、心にゆとりができるのかもしれません。
おいまつクリニック
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大阪府茨木市の耳鼻咽喉科。いびきやめまい、補聴器、甲状腺、嚥下に対し、専門性の高い医療を提供します。
丁寧な診察と、苦痛の少ない正確な内視鏡検査。内科的アプローチを駆使して、おなかの痛みを解消します。